東善寺・住職のコラム     風船の運と縁



  法話
風船の運と縁

 ◆あ、風船が飛んでる!
 渋峠スキー場(群馬県草津温泉から長野県志賀高原へ行く峠)のリフトに友人と乗っていて気がつきました。私たちのリフトが登ってゆく、その左手前方(西の方角)から青と白の風船二つがつながったままフワフワと風に流されるように現われ、リフトよりちょっと高いくらいのところを右手(北東)へ飛んでゆきます。そのまま風船は右手の針葉樹の林に隠れるように降りて見えなくなりました。友人も私の声に気がついて「あそこの木に引っかかっている」と言います。風船の下になにか結び付けられているように見えたので、気になった私たちは、リフトを降りるとその林の中に滑ってゆきました。
 風船は針葉樹の木の枝の、3メートルくらいの高さに引っかかって弱い風に揺れています。ストックを伸ばしても届きません。スキーを脱いで気に登るのも面倒だしとあきらめかけたら、友人が「ストックをつないだら・・・」と言います。友人のザックのひもをほどいてストック2本をつなぎ、ようやく風船をはずすことができました。
 
 ◆風船には黄色い紙の手紙が結び付けられていました。富山県高岡市戸出町の「菜の花フェスティバル」というおまつりで小学2年生が飛ばしたもので、男子一人、女子二人の3つの手紙がついていて、「ナタネをだいじにまいてください」「見つけたらお手紙をください」などと書かれ、ナタネがセロテープで貼り付けてありました。11時に飛ばしたそうで、拾ったのが1時30分ですから、2時間30分でここまで飛んできたのです。すごいことですね。
 家に持ち帰るとさっそく3人への手紙を書いて戸出町のフェスティバル本部あてに、ポストに入れました。風船を見つけた場所やその時の様子を書き、手に入れた時の写真も入れました。
 
    
 ▲渋峠スキー場のリフト                    ▲風船がたどり着いた林
 ◆ひと月ほどして、その男子一人の「かいと」君から手紙が来ました。「きのう、校長先生によばれて、てがみをうけとったよ。とてもびっくりし、うれしかったよ・・・」という喜びの気持ちが素直に書かれた手紙でした。手紙の最後に自分の似顔絵が添えられていて、それが同封されていたかいと君の写真とよく似ているので、たのしくなりました。

◆その手紙で、はじめの風船は青一つと白二つ、友達とからませて飛ばしたことがわかりました。これは正解だったようです。
 拾ったとき風船は青と白の二つでしたが、もう一つの白が途中で破裂したらしく、破裂した残りの空気を入れる口のところの白いゴムがヒモに残っていました。三つをからませたから空高く舞い上がり、北アルプスの立山や剣岳を越え、深い黒部川の谷をまたぎ、白馬連峰の針ノ木岳や鹿島槍ヶ岳を越え、さらに長野の盆地を越えて渋峠まで飛ぶことができたのでしょう。
 
◆途中で白い風船ひとつが破裂していますから、その手紙1つだけならどこかに落ちて―運が悪かった、でおしまいになるところです。でも、三つをからませたおかげで、残り二つの風船が「がんばれ!」「しっかりつかまって!」とはげまし続けて飛んだのでしょう。「運が悪かった」で終わらせないで私たちに拾ってもらう「縁になった」のは、三つをからませることをしたおかげでしょう。
 
 運を縁に変えることをしておいたのですね。

◆運は努力してもしなくても、どうにもならないことがあります。でもいい努力をしておくと、いい運にめぐり逢い、いい縁がうまれることが多いようです。


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